クローバーの約束

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もう何度目になるのでしょうか。 あんたが亡くなってから毎年来ていますが、いつまでたっても景色は変わらず、あの日々が昨日のように思い出されます。 あんなに僕にべったりだったくせに、いきなり隋へ放り出されたと思ったら、そのままぽっくり逝ってしまって。 どうせ拾い食いでもしたのでしょうね。それとも川にでも落ちて風邪を引きましたか? どちらにしろ、あんたは結局いつでも僕を置いていくんですよ。 まったく、どこまで身勝手なんですか? 朝五時に、起きてっ、弁当作って山に、登ったり、仏教徒のくせに、クリスマスっ…ケーキをぉ、作れだとかぁ、ヒック、いつだって僕を誘ったのはあんただった!! ふっ……僕が言えないのを、あんたは、ふぇ…知ってたから…… 太子の、馬鹿、ばかばかばか!!! 大馬鹿ですよ…… 馬子さんからぁ…聞きましたよっ 死に際見せたく、ないだなんて そんなのいつもの奇行からしたら逆に普通ですよぉ……!!! なんとか言ったらどうですか? バカ太子…… …取り乱してすみません。 あ、そういえば僕、大徳になったんですよ。あんたと同じ、紫の冠です。 僕のほうが似合いますよ? なんて、あんたみたいに言うのは痛い子みたいなのでやめときます 僕の孫はもう5つになりました。 毎年この日に活ける花をあの子も否定するようになりましたよ。 言うに四つ葉のクローバーはお花じゃないよ、らしいです。 僕だって飾るならもう少し派手なものにしたいですが、どうせあんたのことです、そちらでも四つ葉のクローバーが見つからないとわめいているのでしょう。 ですから、僕からあんたに送ります。この日だけは、いっぱいのクローバーを。 僕も最近目が霞んできましてね、腰も痛くなってきました。 もうすぐあんたのところに行けるのでしょうか? もしそうなったら、しょうがないので、もう一度お世話してやってもいいですよ。 それまでどうか、待っていてください。
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