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嗚呼、キミの血は
なんて綺麗なんだろう
恍惚の笑みを浮かべながら
狂ってしまった私の愛しい彼が言う。
(…痛い、)
頬に付けられた真新しい傷が
ずきずきと痛む
私の血が付いたカッターを手に彼は
無邪気に笑っている
彼が不意に手を挙げたから
私は痛みに備えてぎゅっと目を瞑った
でも、いつまでたっても痛みは来ない。
不思議に思って目を開けると
彼は、精一は、自分の頬を私の頬を切ったカッターで
まるで線を描くように切っていた
「…何…してるの?」
無意識に頬の傷を押さえながら
声を絞り出して問いかける
『ほら、キミと同じ』
精一は、頬の傷を指差し
ニッコリと満足そうに笑ってそう言った。
(…次はどこにオソロイの傷を付けようか、)
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