甘い言葉に、

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歯医者さんパロ 歯科関係の方は見ないほうが身のため。本当に。 「えー!!いいじゃないかちょっくらい!」 「図々しいにも程がありますよ、………松尾さん。」 ─────────────── ここは都内の一角にある小さな歯科医院。 11:00を少し回った頃、その応酬が院内に響いた。 なんでなんでと駄々をこねているのは近くの会社に勤めるサラリーマン、松尾芭蕉。 そして冷静にさらりと受け流すのがこの病院の若き院長、河合曽良である。 この戦いの経緯はこうだ。 昨日、芭蕉は新社員歓迎会で遅くまで飲んでいた。そして本日起床が10:30。歯医者の予約が11:00。 案の定遅刻したというわけで。 患者が遅刻してきた場合はあとの人の流れが緩やかになるまで保留が基本。今日は土曜日なので人も多く、待ち時間が長くなるのは必至。 しかし芭蕉の遅れはほんの二分で(代わりに見た目はぼろぼろ)、しかもこの後会社では臨時会議が控えているからこの機会を逃すわけにはいかないと粘っていたというわけだ。 芭蕉は昔から歯医者が本当に苦手で、だからこそ歯の健康には気を使っていた。もともと歯並びは良く丈夫だったので、特に何をしていたとかはないが。 だか突然の昇進と年度末の多忙さが原因だろう三ヶ月ほど前、ついに虫歯ができてしまった。 びっくりするくらいの痛さに我慢できなくなった芭蕉はすぐにネットで歯医者を検索した。(ちなみにキーワードは"歯医者" "痛くない") そこで発見したのがこの「河合歯科医院」。コメントには<痛くない!><子供にやさしい>等あったが、一番多かったのはダントツで《院長が美人!!!》ということだった。 痛くなくて優しくてえらく美人で、しかも会社に近いとくれば芭蕉もこれ幸いと「河合歯科医院」へいそいそと足を進めたのだ。
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