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実際目的地にあったのは、期待を裏切らない清楚な外装、ゆったりとした待合室、そしてえらく美人な『男の』院長だった。
コメント者がほぼ女性だった時点で気付くべきだったがもう遅く、初対面から奇声をあげ、顔をしかめられついでに暴言を吐かれた。
痛かったらやめてやる!!とおもっていたが医師としての腕はすこぶる高く、まったく痛みもなしに治療は終了した。今までの恐怖もなくなり上機嫌で、曽良に進められるまま歯のクリーニングに通うことになったのだった。
「たのむよぅ……今日これから臨時会議なんだ。私遅れたら怒られちゃう……」
「遅れる松尾さんが悪いんでしょう。子供だって時間前には来て静かに待ってますよ。と言いますかその格好で会議に行くなんて気がしれません。」
そういって曽良は大げさにため息を吐いた。
優しいと噂のこの医者、確かに優しいのだがそれは子供限定で。
大人に対してはまるで役所のような厳しさなのだ。
その言葉に芭蕉はついにあきらめ、決壊しそうな涙をこらえて曽良を見上げた。
「うん…、分かったよ。確かに大人気なかったね!!クリーニングも最後一回だったしもう通わなくていいよね?」
そういってさっきとは打って変わって明るく受け付けへスキップしだした。
その言葉に曽良がぴくりと反応した。
嬉しそうにする芭蕉の肩をつかむと「ちょっと。」といって病室の奥へと引きずっていった。
パタン、と閉まるドアに動揺を隠せない芭蕉を見て、曽良はゆっくりと話しだした。
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