甘い言葉に、

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「実を言いますとね、松尾さん。この前の検診で異常が発見されたんです。」 「え、あ、うん……ってえぇぇえぇ!!」 「そのことをお伝えしようと思ったのですが、遅れていらっしゃったので…。こんなところで詳細を言えることじゃないので診察台で伝えたかったのですが。もういらっしゃらないんですか?」 恐怖に震えた芭蕉はプルプルとしていた体を強ばらせ目を見開いた。 「い、行きます行きます!!ああああ明日にでも!!!ふぅぇぅ…私助かるんですか…?」 その姿に目を細めた曽良はできるだけ優しい声色で芭蕉の肩に触れながら言った。 「ちゃんと治療すれば大丈夫ですよ。もしよろしければ、今日会社帰りによってください。診察時間は過ぎていますが、僕はいますので。」 その言葉に芭蕉は涙を流しながらとびきりの笑顔で頷いた。 「ありがとう……!!河合先生は優しいねっ!じゃあ会社帰りに寄っていくね。本当にありがとう!」 「いぇ、医者の務めですから。」 「ふふ、河合先生は真面目さんだね!」 そういって頬を紅潮させて出ていく芭蕉を見送った曽良がニヤリ…と、めったに見せない笑顔を見せていたのを芭蕉は知らなかった。 19:30も回った頃、芭蕉は会議と土曜残業を終え、やっとの思いで河合歯科医院へたどり着いた。 閉院しました、という掲示の後ろからそっと暖かい光が漏れている。 午前の宣告に恐怖は残ったままだったが、河合先生のあの優しい声を思い出すと「きっと大丈夫」と思えてしまうのだ。
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