甘い言葉に、

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そうして触診が始まった。 最初はびくびく怯えていたが、次第に……次第に変な気分になってきた。 (え、ちょ、なに…これ……) 診察の一貫なのは分かっている。しかし何とも言えない気持ち良さに、芭蕉は堪えていた。 キスをした時のような、歯茎をなぞる感覚。たまに首筋に当たる細く骨張った指。見上げたところにあるきれいな顔、低い声。 すべてに感情が昂ぶった。 熱があるかのように顔が熱くなっていくのがわかる。 曽良もそれに気が付いたのか、目を細めて芭蕉を見つめる。そして耳元に近づき、低く、優しい声で語り掛けた。 「どうしました?松尾さん。」 「……///!!」 「おや、熱でもあるんですか?」 今にも触れそうなほど近づいた唇から発せられる吐息にも近い声に、芭蕉は堪えきれなくなりついに涙をこぼした。 恥ずかしくて切なくて、何とも言えない感情が芭蕉の中を駆け巡る。 それは心だけでなく、体にもあらわれた。その昂ぶりを隠そうとするも、診察台の上では為す術もなく、内股になりフルフルとするしかなかった。 その姿を見て、曽良はニヤリと笑う。 「…そういう事ですか。」 あぁ、気付かれてしまった…。 そう思い芭蕉はまた涙を流した。 だが芭蕉も曽良も男だ。そういう事もある、と流してくれるだろうと芭蕉は思っていた。
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