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「先生、どうでしょうか?」
病院の院長らしき男が、カルテを見ながら難しい顔をしていた。
「ふむ、良くありませんなぁ。いや……、この前よりもむしろ悪くなっている」
「薬でなんとかなりませんかね。私にはやらなければならない問題が山積みなんです」
院長はカルテを机の上に置き、診察にきた政治家に向き合った。
「それは無理ですな。酒と煙草を完全にやめていただかなければ。あなたの肺と肝臓は、もうかなり弱っています。それに、痛風の症状もあらわれている。贅沢も控えてもらわなければいけませんな」
「酒と煙草……。それに美食までやめろだって。馬鹿な。そんなこと私にできるわけがない。我慢するなんてもってのほかだ。何のために生きているのか分からんではないか!」
彼は続けてこう言った。
「長生きなんてできなくてもいい。好きなこと好きなだけやり、食べたいものを食べたいだけ食べる。これが私の主義、そして生き様だ!」
彼はでっぷりと太った腹をなでながら、豪快にきっばりとこう言い放った。
側で話を聞いていた秘書は、なんともいえない顔をしていた。
Fin
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