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ある有名な政治家が、座談会にて熱弁をふるっていた。
テーマは、人類の未来について。
「今日、世界中では、人類の今後の生存をおびやかす様々な問題を抱えております。食料問題、石油エネルギーの枯渇、フロンガスの増加によるオゾン層の破壊、地球人口の増加、森林伐採による砂漠化の拡大……。このままでは我々人類に未来はありません。そのために、私達は今、何をしなければならないのか」
彼はそのための具体的な政策を提案した。
それは、環境問題に関するあらゆる面での規制の大幅な強化。
それには国民に相応の負担と制限、我慢を強いざるをえないこと。
今のうちに手を打っておかなければ、手遅れになってしまうこと。
そのためには、国民の深い理解が必要であること。
いわゆる、痛みをともなう改革。
それらを詳細なデータによる解説と、巧みな話術による説得をもって、聴衆に訴えかけた。
彼は最後にこう結んだ。
「現状の環境のまま放置していてはなりません。今すぐにでも、手を打たなければならないのです。手遅れになってからではもう遅いのです。そのためには、私達一人一人の確固たる自制の念と、未来を見据えた先見の意識が不可欠なのです」
盛大な拍手に見送られ、彼は檀上を後にした。
どこからともなく秘書がやってきて、政治家にささやいた。
「お見事な演説でした。これでまた、あなたの支持率は上がることでしょう」
「君ぃ……!」
彼は厳しい口調で秘書に言った。
「さっきのは、私の本心から出た言葉だ。選挙だの支持率だのそんなことは全く関係ない」
「も、申し訳ございません。今のは失言でした」
秘書はすっかり恐縮して、慌ててその場をとりつくろった。
「ふん、まぁいい……。それより車を出してくれ。ちょっと寄りたいところがある」
政治家と秘書を乗せた高級車は、ある建物の中に入っていった。
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