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ふと、彼は自分に何かが近付いて来る音がした。
「・・・近付かないでください、死にますよ?」
だが、近付いて来る音は止まらない
動物か、そう思い音のする方をチラッと見た。
動物じゃない・・・人だ。
また、生物を殺す。
そうなるのは嫌だった。
彼は立ち上がり、近付いて来る者から逃げようとしたが、彼には立ち上がる気力さえ残ってはいなかった。
「本当に、死にますよ!?、来ないでくださ・・・」
暖かい、何年ぶりだろう
人の手に触れたのは・・・
「私は大丈夫ですよ・・・特別なんで」
男は微笑むと、頭に乗せた手で彼を撫でた。
いとおしく、家族と思わせるような・・・
「貴方も、苦労したんですねぇ」
「僕は・・・苦労なんてしてません・・・・・・ただ、無意味に自分の意思と関係なく生き物を殺してしまう」
「それを、一般では苦労したと言うんです」
男の微笑みは、彼から恐怖を取り除けるかと思わせるくらいに神々しかった。
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