天に見放された落とし子

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 この世界は、ちっぽけでつまらない。  何故人はこんな世界で楽しく生きることが出来るのだろうか。  他者に支配され生きる者、他者を支配して生きる者・・・・・・それらを傍観しながら生きる者。そんな人間ばかりが世界を構成している。  つまらない。  そんなことを考えながら街を歩く青年の姿があった。  街灯に照らされる髪や瞳の色は紅く、口にはタバコをくわえている。  彼はただ、何の目的もなく街中を徘徊していた。暗い街を。  静まりかえり人の気配も無い、虫の声だけが響いていた。それを少し寂しいと感じていたが街の事情なのだから仕方がない。  昼は人目を気にしてなのか平和だが、夜は人通りの少なさを利用して強姦、恐喝、殺人・・・・・・犯罪が多発している。  だから夜の街は嫌いだと青年は思っていたが、その静けさが好きだからと夜に出歩いている。  だんだんと吸っているタバコの長さが短くなってきたので、青年は近くに見えたゴミ箱に捨てようと近付いた。  その瞬間だった。ゴミ箱が置かれている建物の間の通路の奥から「たすけて」と女性の声が聞こえたのは。  青年は、捨てようとしたタバコを持つ手を止めて声の方を向く。
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