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聞くにも耐えない声が暗い奥の方から響き、顔を少ししかめながらため息を深く吐いた。
空いている手で髪を軽く掻くとタバコをゴミ箱に捨て、足下に転がっていた小さな石を手にして奥に見える男の影に向けて放り投げる。
石は影に命中したようで、低い呻き声をあげると影は路地の向こうに消えた。
だが、それだけでは助けたことにはならないので路地を進み、倒れている女性に近づいた。
女性は半裸の格好で近づいてきた青年を恐怖している眼差しで見ながら震えていた。
当たり前か。
そう思いつつも溜め息を吐いて自分の上着を脱いで女性に着るように促すとしゃがみこんだ。
「・・・・・・名前は?」
「・・・・・・ミラ」
月明かりが路地を照らし女性の顔を写し出した。
顔は何処と無く幼さが残っていたが、自分と同じか歳上だと判断できた。
その女性に笑いかけ、青年は口を開く。
「OK、ミラちゃん・・・・・・俺は敵に見えるか?」
ほんの数秒間、女性は青年を怯えた表情で見ていたがすぐに首を横に振った。
「よし、送ってくから・・・・・・家はどこだ?」
優しく声をかけて女性の頭を撫でる。
触られる瞬間、少しビクッとしたが受け入れて自分の住まう場所を言った。
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