ひき逃げ

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浮かれた気分で自転車をこぐ。 思い込みなんかじゃない。 今だって頭の中で写真を見ることが出来る。 あぁ、草花を撮ったのは夕方だったのか。 今情報を得ることが出来る。 これは記憶力? 違う気がする。 記憶しているのとは違う。 情報が既にある感じ。   何だろう?   何だろう?   奇妙な疑問と闘っている時だった。    キキー ガシャーン   骨が折れる音がした。 僕は反射的にブレーキをかける。 目の前は道路。 横断歩道。 信号は青。 大型車と自転車、人が。 そこに。 自転車が倒れている。 その傍に高校生が倒れている。 あの高校生の骨が折れる人か、あの音は。 あの高校生は、ひかれたのか、あの大型車に。 僕は動けなかった。 何か行動しなければならない。 そんなことはわかってたけど。 そして、僕は信じられない光景を目にした。 その大型車が動き出したのだ。 普通、降りて様子見に来るだろ。 ……ひき逃げ?   大型車は高校生を避けて走り出す。 ふざけてる。  僕は  走り去る大型車を  撮った。
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