ひき逃げ

12/26
前へ
/56ページ
次へ
言うべきことを整理しているうちに、嫌な嫌な生徒指導室に着いた。 何故嫌なのかというと、ここに用事がある時はたいてい良くないことが原因だからだ。 きっと誰もが好まない部屋だろう。 身なりを簡単に整え、ノックをする。 向こうから「入っていいぞ」という返事が来たので、ドアを開ける。 そして言った。 「昨日のひき逃げ事件のことなんですが」   すると、中にいた数人の先生はみんな僕を見た。 厳しい目だ。怖いから止めてほしい、本当に、冗談抜きで。 生徒指導の担当に当たる先生は怖いんだ。 甘い先生はきっとここには入らないんだろう。 「何か知っているのか?」   僕は頷き、中に入ってドアを閉めた。 「あの事故の時、たまたま近くにいて……。驚いて混乱状態になり、行動はちょっとしたことしかできませんでしたが、車のナンバーは見ました」   言い訳をしっかりしてから本件を言った。 「本当か?」 「はい」   空気が更に張り詰める。 嫌いだ。 こんな空気。 さっさと済ませたい。   先生の一人はメモ用紙とペンを取った。それを見計らって僕は言う。 「僕の記憶が正しければ」 僕は車のナンバーを見る。 「2512です」   確かにその写真にはそう写っている。 確実だ。生徒指導部長の先生が言った。 「ありがとう。本当に感謝してるよ。名前は何ていうんだ?」 「えっと、二年二組十番松村です」 「二組の松村だな?貴重な情報をありがとう」   僕は頷いて「失礼します」と言い、ここを出ようとした。 その時だった。 「君!」 誰かが僕を呼んだ。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加