ひき逃げ

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「トイレ済ませたほうがいいですよね。行ってきます」 「それなら心配ないと思うが、まあいいか。そこにあるから行っておいで」   僕はトイレに入り、鍵を閉めた。 僕も本当はトイレのことなんて心配してない。 ただ、休憩が欲しかったのだ。 神田さんといると疲れるというわけではないが、他人と長時間一緒にいることは、なかなか体力のいることだと思う。 いくら親しみやすい人とは言えど、少しひとりで頭の中を整理する時間が欲しい。   頭の中を整理……か。 もしかしたら―――神田さんが下手な失敗をしたら、もうこんな思考も出来なくなるのかもしれないな。 詳しいことは分からないが、有り得ないことはないだろう。失敗して脳死の状態……。   怖いな。   もしかしたら、手術後には記憶はないかもしれない。 体が麻痺しているかもしれない。 未知の手術。 だから、怖いんだ。 誰もやったことのないことだから。 そういう意味では僕は実験台。 どうなるか分からない。
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