夢って何だ?

10/21
前へ
/88ページ
次へ
朝海は明の後ろで、夏の風を感じた。 ものすごいスピードで街が通り過ぎていく。見慣れたはずの景色が、いつもとは違って見えた。 「なぁ、朝海!海はどこだぁ!?」 必死に自転車を漕ぎながら、明は朝海に尋ねた。 「あんた場所も知らないのに海に誘ったの!?この道を…」 ゴォーーー 風が強すぎて思うようにしゃべれない。 「あぁーー??何だって?全然聞こえねーよ!」 明も風の音に負けないように大声で叫んだ。 「右よ!みぎぃぃぃ!」 朝海も明に負けじと大きな声を出した。 「なぁ、ちょっと虫あみ持っててくれねぇか?邪魔くさくて思うように漕げないよ!」 「あんたが勝手に持ってきたんでしょ?」 渋々、朝海は明から虫あみを受け取った。朝海が虫あみに目をやると、汚い字で 『しのずか あさら』と書いてあった。きっと、『しのづか あきら』と書きたかったんだろうが、幼い明には限界だった。 …この虫あみは!? 朝海は8年前の出来事を思い出した。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加