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だが、この暴走した馬鹿を止めなければならない。それこそ、朝海は自分に与えられた使命と感じていたのだ。
「あんた早く帰るよ、風邪引くよ?こんな所にイルカはいないって。どうしても見たいなら水族館に行きなよ。」
「何でここにイルカがいないってわかるんだよ!調べたのかよ!?」
「はぁー…。あのねぇ、常識的に考えて日本の海にいると思う?」
「常識って何だよ?それはおまえの中での常識だろ?俺の常識ではいるかもしんない、むしろ居てくれだ。」
「本読んだりニュース見たりしてたらわかるでしょ?港にイルカはいません!」
「おまえはいつだってそうだ!人に聞いたり本で読んだだけで確かめようとはしない!だから頭の良い人間は嫌いだ!」
朝海はその場で泣き崩れた。長い間、誰よりも明の側にいて、誰よりも明の力になってきたのにまるで裏切られた気分だった。
「知らねぇ!」
明はそう言い放ち、自転車を蹴っ飛ばした。自転車は勢いよく飛び、チェーンが切れてしまった。そして無言のまま、すたすたと歩いて帰った。
朝海は海にただひとり…カラカラと自転車のタイヤの音だけが聞こえた。
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