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朝海は立ち上がり急いで涙を拭いた。
「やぁ!」
さっきまでの態度とは違い、明は落ち着いていた。
「何しにきたのよ?」
朝海はまだ不機嫌だった。
「ちょっと忘れ物をさ」
「忘れ物?あぁ自転車ね?もうチェーンが切れてどうせ乗って帰れないわよ!」
「ちげぇ~よ。」
「あぁわかった。どうせあんたいつものあれでしょ?『朝海!俺の脳みそ知らない?どこかに忘れたんだ!』って言うんでしょ?ここにはないし、そもそもあんたの頭ん中には脳みそなんて入っていないじゃない!」
「おまえだよ。」
「…はっ?」
朝海はキョトンとした。
「俺、朝海忘れた。だから取りに来た。ほらっ行くぞ?」明は手を差し出した。
朝海は全く状況を飲み込めていなかった。
「えっ?えっ?どうゆう事?よくわかんないんだけど?」
「まぁいいから、乗りな?」明はそう言うと、背中を朝海に向けた。
「嫌だ!私重いもん!明潰れちゃうよ!」
「潰れねぇ~よ!」
明は無理矢理朝海をおんぶした。
「降ろして降ろして!体重ばれちゃうぅ!!」
「はいはい、ジッとしてて。」
夕焼けの帰り道。朝海は明の背中で涙を拭いた。そして小さくつぶやいた。
「…ごめんね。」
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