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寂しげな夜の月は 悲しげな空にパラパラと小粒の雨を降らせました。
「もうこれで寂しくないでしょ?」
月がそう言った気がした。
今日もただひとり、公園にいた。
赤く腫れ上がった左のほっぺたを押さえながらベンチへと向かう。
何か嫌な事があるといつもこのベンチに座る。
昔からの習慣だった。
泣き虫明の特等席。
「明、みっーけ!」
後ろから女の声がした。
…朝海だ。
明の家の隣に住んでいてクラスにひとりはいる世話好きの女だ。今日も親父に殴られ家を飛び出した俺を、母親に頼まれ探しに来た。
…そんな所だろう。
「雅子さんに頼まれて探しに来たんだけど、すぐに見つけちゃったね。」
…やっぱり。
「あんた傘は?」
「使った事がない。」
「ほっぺたどうしたの?すごく痛そうだよ?」
「どうやら大きい蚊に刺されたみたいなんだ。」
「はいはい、またおじさんに殴られたんでしょ?今日はどんな理由?ほらっ、朝海お姉さんに言ってみなさい」
「…わかってるなら聞くなよ。高校には行かないって言った。」
「…そしたら?」
「…右ストレート。」
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