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明がまだ8歳の夏休み、明は自分の母親が営んでいるピアノ教室へと足を運んだ。
レッスン中の朝海に会うためだった。
「なぁ、朝海!遊びに行こうぜ!あの池にネッシーが現れたみたいなんだ!」
ルンルン気分の明をよそに、明の母親雅子は
「こら馬鹿息子!朝海ちゃんは見ての通りレッスン中なんだから邪魔しないの!」
と冷たかった。
「いやだつまんね!朝海はいつ終わるんだ?」
朝海は気まずそうに雅子の顔を見る。すかさず雅子は
「あんたと違ってまともな子は夏休みを無駄にしないの。さぁ朝海ちゃん、あんな馬鹿はほっといて続き続き。ここはねぇ、こんな感じで…」
と軽く明をあしらった。
「ちぇっ、つまんね。だいたい音楽の何がいいんだ?まぁしょうがない、終わるまで待つか。」
明は教室の隅っこでお行儀良く体操座りで朝海がレッスンを終えるのを待っていた。
教室に響き渡るピアノのメロディ。
優しい音色が狭い教室の時間をゆっくりにする。
音楽ってやつもたまには悪くないのかもな。
明は教室の隅っこでそんな事を思っていた。
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