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朝海は走った。
さっきまで悩んでいたのが、まるで嘘のように、笑顔で。
朝海は気付いた。今まで自分にとって足枷のような存在だと思っていた明が、間違いなく自分の栄養剤になってる事を。
「あきらー!早くー!」
「ちょっ、ちょっと待てよ!砂の中に…じゃない、靴の中に砂が!」
朝海は走るのをやめた。
息を切らせながらその場に座り込んだ。
「ふぇ~…やっと追い付いた。」
へとへとになりながら明も朝海の隣に座った。
「はぁはぁ…おまえ何見てんだ?」
海をまっすぐ見つめる朝海に明は聞いた。
朝海は視線を動かす事なく口を開いた。
「…夕日。キレイだね。何でだろう…夕日を見ると悲しい気持ちになるのは…。」
「さぁ…。でも太陽も寂しいんじゃない?俺達とさよならするのがさっ。」
「確かに…。太陽がなくなると夜が来るもんね。」
「心配すんな、朝海!月が来る。真っ暗になっても月が来る。」
「うん…。」
寂しい気な太陽は、海と砂浜と、朝海と明をオレンジ色に染めた。
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