義妹のペースに嵌まる愚兄。

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目を開くと、ぼやけた輪郭が目に入る。輪郭だというのなら、それはナニカだろう。人間かモノかというなら、人間だろう。だってコイツは。 「おい。またお前か」 「えへっ。来ちゃいました」 だってコイツは――義妹なのだから。 「お前。大人しく帰ったんじゃないのか?」 「お泊りセットを取りに帰ってました」 見るに義妹の隣に置かれている、でかいバッグのことだろう。なんだ。テリー伊藤でも入っているのか? 「エスパー伊藤ですよ。兄さん」 「知らん。どっかの伊藤さんだろう。じゃない。思考を読むな。なんだお前は。お前こそエスパー義妹か?」 「兄さんの考えていることだけは分かります」 「分かってない。全然。お前は分かってないよ」 とりあえず寝返りを打とうとして(覗き込む義妹から目を逸らそうとして)気が付いた。ここまで忠実に、最後の瞬間を再現してくれるなんて。驚きの再現率だよ。まったく。  
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