《第二章》

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俺が教室を出てから30分後。 未だに彼女は姿を見せていない。 しかし、なぜかここを離れてはいけない気がして……というのは言い訳で、ただ妄想によって時間が経つのを忘れていたにすぎないのだが、とにかく俺は健気にも彼女を待っていた。 「はぁ、はぁ、すいません。 お待たせしました」 どうやら走って来たらしく息は軽く乱れ、額には少し汗が見える。 「あれからクラスの皆さんがいろいろ話し掛けて来たり、いろんなクラスの人が集まって来たりして大変だったんですよ…… それで悪いとは思ったんですけど、トイレの窓から逃げて来ちゃいました♪」 彼女はそう言っていたずらっ子のように小さく舌を出した。 あれ? トイレの窓って俺たちの教室は三階だぞ!! どうやって逃げるんだよ!? まさか、飛び降りたとか…… まさかな…… 「別に遅れた理由はどうでもいいから。 それより霧島さん、なんでわざわざこんな所に?」 「あっ、玲奈で結構ですよ♪」 「う、うん……で玲奈はなんでこんな所に俺を呼び出したんだ?」 なんとか自然に言ったが、いきなり呼び捨てとなると緊張するものである。 「雄二くんも聞きたいことがあるんですよね? どうぞそちらからお願いします」 彼女の話しとやらも早く聞きたいのだが、これを断る理由も見つからず、どうせ順番が違うだけだと今朝のことを聞くために口を開いた。
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