第一章

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その典型的な例が隣に住む富五郎である。 元々外出などろくにしない性分だったところに、昨年の冬頃に腰を煩い、最近ではめっきり外出をする姿を見かけなくなった。 たまに見かけるとしても、介助のための猫用車椅子を装着して、彼の飼い主である面倒見のいい老婦人と一緒に散歩をしているところが精々である。 そんなわけだから、我が輩も気が向いた時分に隣を訪ね、少しは運動でもしたらどうだとせっついてみたのだが、彼の歩行がよちよち歩きを経てほふく前進の体を成して来た頃には流石に諦めた。
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