万死一生-ヌルいセカイのカタスミにて-

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 都会暮らしの青年にとって、延々と続く森は異質な物だ。中心地から少し離れれば緑あふれる中に突入する事が出来るが、こことそれとではレベルが違う。まず舗装されていない道自体初めて見る。  それでも目的地はこの先にあるわけで、青年は揺れる車体に不安を覚えながらも運転を続けた。  と、途中に緑以外のものを発見し、ブレーキをかける。いったんエンジンを切り、車の外に出た。  道の真ん中に落ちているそれは、人間の子供――しかも女のように見える。地面に広がる長い黒髪はこぼした墨汁を思わせ、うつぶせに倒れた小さな体は屠殺を待つ家畜に見えた。 「おい、大丈夫か?」  声をかけるが動く気配はない。まさかいきなり死体か、と不安になった青年は、少女の首筋に指を当てた。
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