第1章『孤独』

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「漣、やっぱり専門学校にでも…」 妃は漣にそう言った。伸子の箸が止まり、漣の眉が一瞬ピクリと動いた。漣は大きな溜め息をついて答えた。 「また進路の話?何回も言ったけど、進学も就職もせえへんから」 「あんたはもう高3で今は12月なんやで?まだ進路希望調査出してないん!?進路は当然決まってるべき時期やのに…大学も就職も専門学校も拒んでたら、将来どうすんの?」 良い機会とばかりに、漣に進路のことを話した。 「…やりたいことあるし」 ぼそっと言い返してきた漣の意外な言葉に、妃は思わず母と顔を見合わせた。 「やりたいこ……」 「…ごちそうさま」 詳しく聞こうとした矢先に、漣はぶっきら棒にそう遮り、朝ごはんを少し残し、リビングのドアを開けた。 「あ…今日雨降るらしいから学校に傘持って行きよ!」 伸子は去っていく漣の大きな背中にそう言った。 「ちょ…漣!まだ話終わってないで!」 「妃、もうええやん」 妃は漣を追いかけようとしたが、伸子がそれを止めた。母にしては穏やかな声だと妃は思った。
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