第1章『孤独』

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漣は自分の部屋で制服に着替えていた。少ししわの入った白のカッターシャツに、ビリジアンのチェック柄の長ズボンをはいた。シャツのボタンを止めていると、またアレが頭を過った。 『ごめんね…』 頭が痛い。痛みが増している。誰が俺に謝っているのだ― 朱色のネクタイを慣れた手つきで強めに締め、黄土色のベストを着た。その上に紺のブレザーを羽織い、黒の学生カバンに教科書を詰めて持った。 部屋を出る前に、漣は扉のすぐ傍にある姿見で自分を見た。自分の顔を見つめながら、右手で優しく右頬を触る。頬が少し痩せていた。一つため息をつく度に、体の中が空っぽになる感覚だ。 鏡の向こうの自分は、本当に八尋漣なのか。絶対3日前のドキュメンタリーのせいだ。里子である自分が全てに過敏になっているだけだ。 家族も、学校も、進路も、俺は里子でなければ今どんな生活をしていたのか。本当の親は、自分をどんな気持ちでここに預けたのだろう― 施設とは違って、ここは本当の家族のように暮らせることがまだ救いだ。しかし何か胸に違和感を覚える。 漣はそれを抱えたまま、部屋を後にした。
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