第1章『孤独』

15/28
前へ
/400ページ
次へ
玄関を出ると、待ちぶせていたかのように冷たい風が頬をついた。早朝より寒い気がする。肩を高くして歩き始めると、後ろから声がした。 「漣!ちょっと待って!」 後ろを振り返ると、里親が走って来た。痩せ細った右手には、黒の手編みマフラーと、左手には折り畳み傘をがっしりと掴んでいた。 「寒いやろ?そんな格好してたら風邪ひくで!ほんでこれ。雨降ったらあかんやろ」 と言い、背伸びをして、ゆっくりとマフラーを巻き、傘を手渡してくれた。 「…うん」 漣は少し照れながらそう言うと、向きを変え、足を前に進めた。 「遅刻したらあかんで!」 里親の声が背中の後ろで聞こえた。寂しそうな声だった。 寂しい?俺がどれだけ寂しい思いをしたと思っているんだ― 孤独が心に突き刺さった。何故自分だけ八尋の姓を名乗っている?何故自分の親だけ姿を見せない?親子の繋がりなんてもうないのか。みるみるうちに、気持ちが冷めていった。 会おうとしたこともない。手段を知らないだけだ。だけど本音は、会い、たい― 顔を見れば、カッとなって吠えるに違いない。 『ふざけんな!!』 それも叶いそうもない。俺は独りで生きていくんだ―
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加