第1章『孤独』

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徒歩で京阪なにわ橋駅に行き、そこから京阪京橋駅まで電車に乗る。JR京橋駅の大阪環状線に乗り換え、JR天王寺駅まで行き、そこから徒歩で、府立天王(てんのう)高校まで行く。これが漣の毎朝の通学ルートだった。 JR京橋駅のプラットホームでは、人々の体を丸くさせる寒気が漂っている。電車を待つこと3分程、オレンジ色の大阪環状線外回りがホームに速やかに入って来た。途端に電車と一緒に、一陣の風が構内に吹き込み、周りの人々は一気に体を丸めた。 漣はマフラーで顔を埋め、ポケットに手を突っ込みながら体を小さくした。少し茶色がかった髪が風で乱れた。 電車が停車し扉が開くと、大勢のスーツを着た中年や学生が降りてくる。一通り人が流れ降りた所で、さっさと車内に入った。 ほんわかとした暖房が効いていたから、顎を埋めていたマフラーを取った。顔や耳が冷たくなっている。 満席だったからドアにもたれかかり、出発するのを待った。かばんを床に置いて足で挟み、かじかむ両手で口をふさいで、暖かい息を吹きかけた。
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