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今日の彼女は桃色のマフラーをしていた。藍色のブレザーの中に白のカッター、その上に紺色のカーディガン、エンジ色のネクタイに黄土色のチェック柄の入ったスカート、自分の高校の女子生徒の制服だ。
その彼女の隣にいるもう一人も顔は知っている。自分の友達の友達だからだ。
漣はしばらく彼女を見入っていた。彼女の黒い瞳が生き生きしている。時間も忘れてしまう。気付けば列車は鶴橋駅に止まっていた。
混雑はこの駅でピークを過ぎた。ここは近鉄線が通っているせいか、半分以上の人が下車した。ようやく余裕のある広さになった。閉まったドアにもたれかかりながら、再び彼女を見た。
いつも遠くから見るだけで良かったのに、なぜか今日は少し違った。ためらい踏みとどまりながらも、もたれかかる身体を起こし、不自然にならないように2人に近づいた。2人の顔が近くではっきり見えてきた。
漣の胸が緊張でキュッと縮まった。彼女と目が合わないように、チラチラと様子を伺いながら、ついに彼女が立つドア付近の向かいまで来た。桃色のマフラーをした彼女の顔を、恐る恐る見た。
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