第1章『孤独』

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漣は単純に、柊瑠璃のことが好きになったのだった。今は彼女にこうして電車で会い、学校で会うことが漣の救いだった。 彼女は気づくはずもない。君は俺を、救ってくれているんだ― ―*―*―*― 柊瑠璃は、同じクラスの八尋漣が向かいからこちらを向いていることに気付いていた。それだけで、体が熱くなった。だからあえて彼と目が合わないように、隣に立つ諸星雫(もろぼししずく)の顔を見るようにした。 雫は1年のときのクラスメートだ。現在はクラスが違うが、同じ玉造からの乗車なので、こうして一緒に通学している。 竹を割ったような果断な性格で、バスケ部の主将を務めた、活発で積極的な女の子だ。そんな雫はすぐさま小声で話しかけてきた。 「瑠璃、八尋君が近くにおる!」 雫は少しはしゃいでいる。彼女は、八尋漣とこうして電車で会うことを楽しみにしている。 「背高くてカッコええわぁ、八尋君」 「雫、好きだもんね、八尋君のこと…」 雫は恥ずかしそうな表情を見せるが雫の態度など手にとるように分かった。 「八尋君、絶対この車両に乗ってくるんよな」 雫が自慢げに言った。 「瑠璃は好きな人おらんのよなぁ?」 瑠璃の心は萎んでいった。
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