第1章『孤独』

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瑠璃はまさか、この雫の前で、自分も「八尋漣のことが好き」など雫の前で言えるわけがなかった。少しうつむいた。 「あれ、もしかして好きな人できた?」 雫はそんな瑠璃の顔を見て笑いながら言った。そんな雫の無神経さに瑠璃は大きな瞳をつむった。 「誰なん?誰なん?」 「いないって、そんなの」 「ちょっと、うちらそんな仲ちゃうやろ?」 瑠璃は落ち込んだ。漣の名前を出すのは出来ない。しかし、しつこい雫を黙らせるには、いないことを押し通すか…別の名前を出すしかなかった。 「ほんとにいないんだって…」 「教えて!誰?」 雫が不機嫌になる。とりあえず別の名前を出してその場を凌ごうか、瑠璃は軽率だとは思いながらもやむなくそうした。 「……斉美(さいび)君」 「え?マジ?!そうなん?ライン知ってん?」 気持ちを抑えられぬ雫は思わず声を大きくした。 「声大きいって…ラインは知らない…」 「何や。早く言ってくれればいいのに。あたし知ってるで?」 雫はスマートフォンを出した。 「いいよ、別に」 好きじゃないから、と瑠璃は言いそうになった。 「何言ってんの?うちらもう卒業やで?絶対後悔するで?ほら!」 雫は斉美のラインアイコンを瑠璃に見せた。やっぱりいないと言って押し通せば良かったと思った。
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