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瑠璃はまさか、この雫の前で、自分も「八尋漣のことが好き」など雫の前で言えるわけがなかった。少しうつむいた。
「あれ、もしかして好きな人できた?」
雫はそんな瑠璃の顔を見て笑いながら言った。そんな雫の無神経さに瑠璃は大きな瞳をつむった。
「誰なん?誰なん?」
「いないって、そんなの」
「ちょっと、うちらそんな仲ちゃうやろ?」
瑠璃は落ち込んだ。漣の名前を出すのは出来ない。しかし、しつこい雫を黙らせるには、いないことを押し通すか…別の名前を出すしかなかった。
「ほんとにいないんだって…」
「教えて!誰?」
雫が不機嫌になる。とりあえず別の名前を出してその場を凌ごうか、瑠璃は軽率だとは思いながらもやむなくそうした。
「……斉美(さいび)君」
「え?マジ?!そうなん?ライン知ってん?」
気持ちを抑えられぬ雫は思わず声を大きくした。
「声大きいって…ラインは知らない…」
「何や。早く言ってくれればいいのに。あたし知ってるで?」
雫はスマートフォンを出した。
「いいよ、別に」
好きじゃないから、と瑠璃は言いそうになった。
「何言ってんの?うちらもう卒業やで?絶対後悔するで?ほら!」
雫は斉美のラインアイコンを瑠璃に見せた。やっぱりいないと言って押し通せば良かったと思った。
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