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駅を出て動物園前を通り過ぎ、一心寺周辺を5分程歩くと府立天王高校へ続く道がある。
八尋漣が前を歩いていた。瑠璃はその長身の後ろを雫とついて歩いた。
「八尋君っていつもあたしらと同じ車両に乗るやん?あたしのこと、好きなんかな」
「焦りすぎだよ、私のことかもしれないじゃん」
上機嫌に雫がそう言った後、瑠璃は胸の中でそのウヌボレを馬鹿にしながら、そう冗談半分のように言った。当然、心の中では冗談とは思っていない。
雫はそれに応えなかった。瑠璃は言い過ぎたかもしれないと焦った。雫は不満を態度に表すから、困ったものだ。
「…あ、もうすぐチャイム鳴るやん!遅刻したら、担任に怒鳴られる!ちょ、先行くわ!」
雫はそう言った後、バスケ部だった頃のように、早めに走った。気まずい雰囲気を察して、わざと先に行ったのかなと瑠璃は思った。
すると雫が前を歩いていた漣にすぐ追いついた。追い抜く寸前に、
「八尋君おはよう!」
と言い、恥ずかしそうに走っていった。
―*―*―*―
漣は急な挨拶に驚き答える間もなかったが、軽く会釈をしてすぐ平常心を取り戻した。柊瑠璃の隣にいた友達で、仁儀の幼なじみだ。あまり喋ったこともない。しかもああいう活発なタイプは少し苦手だった。
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