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だからそんな諸星雫のことよりも、漣は後ろを歩く柊瑠璃のことが気になっていた。時々立っているカーブミラーにちらりと視線を送ると、柊瑠璃が携帯電話を触りながら歩いている。彼女が気になって仕方がない。少し歩くスピードを落とした。
ようやく学校が見えてきたが、チャイムが鳴った。ゆっくり歩いていたせいか、いつものペースが狂った。
漣と瑠璃よりもさらに後ろの学生達が一斉に走り出した。高校の前には交差点がある。信号が点滅しているときに、何人もが横断歩道を駆け込んで行った。
漣も小走りで渡り切った。渡った後にふと振り返ったが、柊瑠璃はいなかった。背中の後ろに彼女がいると思うだけで背筋が伸びていたのに、いなかった。さっきまで後ろにいたのにどこへ行ったのか。高校へ行くには、この交差点を渡らねばならないのに―
天と地がひっくり返ったようにあたりの気配が静まった。水を打ったような静寂が自分を駆り立てた。もう信号は赤になっていたが、漣は中学時代の陸上部で培った走りでもう一度渡って戻った。途端に運送トラックが先陣を切って走り出した。
漣は無意識のうちに柊瑠璃を捜していた。来た道をとりあえず戻り、左右に首を振って彼女を見つけようとした。
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