第1章『孤独』

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先程彼女を確認したカーブミラーまで来た。そこで立ち止まり、辺りを見回した。すると黒いベンツがすぐ傍をゆっくり通り、危うく接触しそうになった。漣は眉間にしわを寄せて車をよけると、車は駅に向かって走って行った。 さっき彼女は自分を追い越して行ったのかな、と漣は心にそう言い聞かせた。しかし追い越された記憶はなかった。何だかよく分からないが、彼女が突然消えたようにしか思えなかった。 漣は額に少し汗をかいた。体も熱い。もう諦めて交差点まで戻ろうとした。 その時だった― ケーキ屋やクリーニング屋などが建ち並ぶテナントとテナントの間の路地に、他校の男子生徒1人と桃色のマフラーをした柊瑠璃がいた。遠目から見て、柊瑠璃は下を向いているように見えた。 彼女が男と一緒にいるだけで、漣の胸はモヤモヤした。しかし気になって近くまで寄って行った。ポケットに手をつっこみ壁にもたれながら陰から会話を盗み聞きした。 〈最近、塾にも来えへんやん〉 〈…〉 〈なぁ、メール返してよ〉 男が一方的に話している。制服を見たが、男はこの辺りではトップクラスの私立高校の生徒だ。確か柊瑠璃も成績優秀だから、塾が一緒でも不思議ではない。 彼女は押し黙ったままだ。
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