第1章『孤独』

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席に着いていると、伸子の右隣に梨青、漣の隣に榮太朗と京が座り、妃が伸子の左に座った。ようやく6人揃った時、伸子は笑顔を作った。 「じゃあ食べよか、いただきます」 「いただきます」 子供達の声が響いた。漣も箸に手を伸ばした。すぐに箸が茶碗を打つ音だけになった。ここ最近は、ずっとこんな感じだった。 伸子も妃も探りたがっていた。漣がひとりで朝早くから何処かへと行っていることをだ。何をしているのか、何を考えているのか、聞きたいが聞けない。繊細な子供だからだ。しかしそれは漣にも通じてるはずだ。 「ほら漣、早く食べなさい」 ぼんやり食べる漣を妃がせかした。会話のきっかけを作ったようで、漣は身構えた。 「こんな朝早くから何処に行ってたん?」 やはり、空気を破るようにとうとう妃がその質問した。漣は静かに箸をおいた。児童を指導するような小学校教諭の妃らしい物言いに腹が立った。 しかし、そのままどんよりとした沈鬱な空気は続いた。燦々(さんさん)と降り注ぐ光が、リビングの窓を通ってサンルームのようにしていたのに、俄かに薄暗くなった。朝日が大きな雲に遮られたのだろう。
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