第1章『孤独』

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ここにいる子どもは皆、里子だった。 漣は物心がついた頃から、このファミリーホームにいた。ここで生まれ育ったと思っていたが、違うらしい。それを知ったのは小学1年の頃だった。 八尋伸子と八尋妃は実の親子だ。だが、漣にとっては育ての母と姉で、血は繋がっていないということを知らされた。生みの親の顔も知らない。知ろうとしたこともなかった。親の都合でここに預けられた、と里親である八尋伸子は説明した。 幼かった漣はそれなりにここの生活に満足していた。当初、ここには漣の他に2人、同じような境遇の子供がいたからだ。 唯斗(ゆいと)は漣と同い年だったが、6年前の小学校卒業を機に、親戚に引き取られた。もうひとりは2つ年上の冴(さえ)という女の子だ。彼女も親の都合によりこの家で生活していたらしい。詳しいことは知らない。その彼女も結局は本当の母親の元に戻った。 3人は歳も近く、本当の兄弟のように仲が良かったし馬が合った。 しかし2人には身内がいて血縁の元に帰ってしまった。漣だけが未だにこの家にいる。生みの親は一向に迎えにきてはくれない。一体いつまで都合が悪いのか。 俺は、見捨てられたのか―
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