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光が、見えた。
朦朧とする意識の中、まるで迎えに来たかのように俺を照らし出す。
楽に、なれるのだろうか。このしがらみから。戦いから。
楽に、なれるのだろうか。この運命から。恨みの連鎖から。
楽に、なりたい。散々苦労をしてきた。大きな怪我も何度も負った。仲間も何人も死んだ。自分自身、死にかけたのは一度や二度ではない。
「けど、なァ……!」
諦めきれない。諦めるわけにはいかない。元々の目的なんて忘れてしまった。恋人の仇か、両親の仇か。それとももっと単純なものか。もう覚えていない。
「負けねェよ。負けるわけにはいかねェ。負ける筈がねェ」
関係ないのだ。最早目的など。
必要なのは、行動。
することはただ一つ。
「おおおおおおッ!」
男が立ち上がる。職業、勇者。彼に降り注ぐ光が広がり、部屋全てを照らし出す。闇をかき消し、勇者の敵をも照らす。
「最後の勝負だぜ、魔王ォ!」
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