英雄(勇者と魔王)

5/9

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「最早俺は目的がなんだったか覚えてねェんだ。元々傭兵として生き、火事場泥棒みてェな真似ばっかしてた俺だ。目的云々の前にこーんなとこにいるべきじゃあねェだろォ」 唐突に自分語りを始める勇者。聞く必要のない内容。しかし、魔王を含め皆が耳を傾けていた。今まで語られなかった、誰も知らない名もなき勇者の人生。これから世界を変えるかもしれない男の話。城を取り囲む戦場の皆までも耳を傾けるのはある意味必然だった。 「勇者なんて他にもたくさんいんだ。俺である必要なんてなーんもねェのに、さ。むしろ俺じゃねェ方が良いだろうよ」 剣を構え直し、まるで自分に言い聞かせるかのように呟く。 「だかよォ、ここまでたどり着いちまった。一番問題ある奴が一番乗りしちまった」 静かに魔力を放出し、身体を補強する。纏う魔力の密度が増し、視認出来るほどに溢れ出す。そして更に魔力を放出して一気に加速する。魔王に肉薄し、再び魔王を殺さんと殺意を込め直す。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加