第1章【田嶋隼人】

6/6
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
チームとしてここを任されている黒服が、必死に宥めようとする。 「こういうことを、あんたたちにほざくとは俺自身が屈辱に感じるんだ」 そう言うと、スーツの内ポケットから細長い茶色の皮の札入れを取り出した。 中から2万円を取り出すと、店員に渡した。 「釣りはいらん」 「も、も、貰い過ぎです」 「適当にオーダーを頼めばいい」 「で、ではボトルを入れましょう?」 「それは、俺にまた来いと言うのか?」 大崎がなかなかここに現れないのに、よく言うなといった目付きで見た。 「連絡先を教えろよ」 マユコに言った。 言われたまま、小さなポシェットから名刺を取り出すと、ボールペンで携帯電話の番号とメールのアドレスを書いた。 「変わったペンの持ち方をするんだな」 「よく言われる」 グーで結んだ手で器用にペンを挟み字を書きながらそう答えた。 「この子に先の渡した金を振り分けておけ」 マユコが渡した名刺を受け取ると席を立った。 店員が、「マユコさんを指名ということでよろしいですか?と少し取りなすように言った。 「ああ。それでいい」 田嶋は、そう言うとバインダーを店員に手渡した。 全てお前に任せたとでも言っているようだった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!