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もしかしたら俺は母さんの泣き顔を今日初め見たのかもしれない。
起き上がった俺は棺を飛び降り、部屋の畳の上に足を付け、言葉が出ない母さんを俺は只見つめた。
「あ…あのさ…心配掛けてごめん」
右手で頬をかきながら俺は謝った。
そんな母さんを初めて見たかどうかは知らないけど、今は只申し訳ないとしか言えない。
「このバカ息子。本当に心配したんだから…本当に生き返るなんて…」
そう言いながら抱き付いてきた母さんは俺より顔一つ小さいことに今気付いた。
「お兄ちゃん!?」
その声で俺は入り口を見た。
立ち状態や仕草まで母さんにそっくりな妹の美夏が立っていた。
すっかり忘れてた…
てか無事で良かったよ本当に。
母さん似の美夏だが髪はショートヘアーである。
前髪は二本のピンで留め、喪服ではなく学校の制服だった。
縦線縞模様のスカートにブレザー、後リボン。
俺と二つ違いの妹は今高一、俺は高三。
春には俺は卒業を迎える。
そして美夏の目も母さんと同じで赤くなっていた。
泣いていた母さんが顔を上げて美夏を振り返って見た。
離れる母さんと入れ替わって今度は美夏が抱き付いてきた。
「良かった…本当に良かったよ~」
と泣きながら美夏は言った。
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