~虚ろな記憶~

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男を見ようと視線をずらした俺は言葉を飲み込んだ。 見慣れた短髪で前髪が逆立っていて、口には髭を生やしている。 そう… 俺の親父だ。 一年前に連絡が取れず、行方を眩ました親父が目の前にいる。 「さてハルよ。そこを退いてもらうぞ」 アイザックが言った。 「それは無理な相談だぜアイザックさんよ」 親父が返し、白髪のおっさんの事を無視しながら睨み合う二人。 沈黙したその場が異様に居づらいものがあった。 「全てを話したではないか?私には時間がないのだよ」 急かすようにアイザックが言う。 親父がそれを聞き、笑い払うように軽く頭を上に振った。 「まだ聞いてないことがあるんだよ…」 親父がゆっくり歩み、少しアイザックに近づきながら言った。 「レインが死んだ理由を知ってるんだろ?」 睨み合いがまた続き、固唾を飲んで見守る白髪のおっさん。
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