No.00 プロローグ

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  12月になった。 鉛色の空が世界包んでいる。 そんな曇天の下に葵は居た。 放課後の屋上にだ。 ようやく解放になった屋上は連続飛び降り自殺事件が解決してから3ヶ月以上が経過してからの事だった。 解決したと言うのは正確ではなく、世間一般にはまたまだ未解決だ。 ただ彪兎が犯人を突き止め、犯人である梨恵はもう犯行を行わない。それだけであった。 ただし、自殺は伝染するため、少しの間は自殺が止む事は無いだろう…… いや、自殺なんか起こらないワケが無いのだから…… その点で言えば、解決は葵の中だけであり、一般は未解決とも思っていないだろう。 兎に角、新しい落下防止用の柵を備え付け、屋上が解放されたのだ。 しかしながら、解放されてもこの寒空の元屋上に出る物好きはそうそう居るものじゃない。 だから葵は独り放課後の屋上で、鉛色の曇天の元、冷え切ったグレーのアスファルトをただただ見下ろしていたのだった。  
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