第4章 不覚のバースデー

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「だったら、私のことは放っておいて」 茜ちゃんは、ありこさんと同じことを、言う。 僕が。 応えてあげられない想いを。 どうにかしたいと思うのは。 僕の傲慢だ。 わかってるけど、茜ちゃんには、辛そうな恋なんて似合わない。して欲しく、ない。 偽善者、と罵られるかな。 「茜ちゃんは…、辛くないの?」 あの夜の続き。 僕は、蒸し返してしまってた。 短冊に書かれたのは、本当の願いなの? 一瞬。 茜ちゃんは、俯いて。 「ねえ、穂積くんに受け取ってもらいたいものがあるんだけど」 僕の質問には答えずに、意味深な台詞を投げ掛けてきた。 「な、なに?」 後ろはドアだけとわかっているのに。 僕は、つい身を後ろに逸らそうとする。 身構えてしまうのは、まだ鮮明だからだろうか。 茜ちゃんが、僕の身体に刻んだ、キスマーク。 僕の明らかな動揺に、茜ちゃんは満足そうに微笑んだ。 (に、逃げたい…)
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