3492人が本棚に入れています
本棚に追加
――…
「…ごめんなさい」
数日経ってようやく全快した山田は驚くほどにピンピンしていた。
「…本当は気付いてた。あれが全て幻覚だったことも… だけど、それでも… 縋りたかった…」
「…奈桜」
「あの植物も、幻覚作用を引き起こすだけで… 何の問題もなかったから…… 」
「奈桜、この学園を出ませんか?」
ふわりと微笑む父の顔に山田は え?と涙に濡れた目を向ける。
「…この学園にいても、辛いでしょう? 今回、僕が来たのはお前を迎えに来たのですよ」
父の言葉に目を大きく見開く。
「………ハル…っ 、てっちゃん…」
山田は不安げに遥達に声をかけるが、二人とも目を合わせようとしない
「…そいつの言うとおりだ。俺達は… 文句言える資格はない」
遥の言葉に山田は愕然とする。
「ハ、ル……っ!」
「行きましょう。奈桜… これはお前のために言っているんですよ」
「………っ ごめんなさい…」
素直に従う息子に山田の父は頭を撫でる。
「もう学園とは話がついています。車もそこで待たせてるので行きますよ」
諭されるように山田はとぼとぼ歩く‥
――が、ふと振り返った山田は一枚の手紙を渚に手渡した。
「今までありがとう‥。何となく、こんな予感はしてたんだ… だから、手紙を書いてたの。
俺が行ってから、みんなで読んでほしい…」
山田に手渡された渚は無言で見据える。瞳に映る山田の表情は寂しそうな顔だ。
――… バイバイ
山田の父と山田は高級車に迎えられて、学園を出ていく。
しばらく見ていたが、もう車の姿は見えなくなった‥。
最初のコメントを投稿しよう!