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伊藤泰蔵は深い眠りから覚めると、見知らぬ場所に居る事に気付いた。
両手両足を椅子に縛りつけられ、口にはさるぐつわを噛まされていてる状況に驚愕した。
朽ち果てる様な木造の狭い部屋の中、天井には古臭い黄色灯がぶら下がりゆらゆらと揺れている。
「何故私はこんな所に居るのだ・・・?」
さるぐつわを噛まされて声にならない呻き声を上げながら、伊藤泰蔵は椅子に縛り付けられた状態でもがいていると
「ギィィ・・・」
と軋む様な音が響いたかと思うと、一人の若い女が伊藤泰蔵の前に現れた。
「ううぅぅぅ・・・」
目を見開きまるで助けを求めるかの様に伊藤泰蔵は呻き声を上げるが、それを見つめる女の瞳や表情は機械の様に冷たく無表情であった。
女は静かに伊藤泰蔵へ近づくと、無言でナイフを使いさるぐつわを外してやった。
「助かったよ・・・ここは何処なんだ?」
「・・・あなたがそれを知りたいなら、私の質問に答えて」
「質問?・・・そんな事よりも早くこれを解いてくれ」
「・・・牧元の居所を教えてくれるかしら?
知らないとは言わせ無い」
女の視線はより冷たさを帯び、伊藤泰蔵を射る様な目で見据えている。
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