1人が本棚に入れています
本棚に追加
「虐めて欲しいんだよね」
そう私が告げた時の彼の顔が、答えの全てを物語っていた。
驚いたような軽蔑したような、まるで得体の知れないものを見るような目を見て、私は慌てて「嘘」と言う。すると彼は引き攣った笑いを浮かべた。
「よせよ、冗談きつい」
「ごめんって」
咄嗟についた嘘という嘘はナイフとなり、私の心を深くえぐった。
「腹、減った」と呟きながらキッチンへと消える彼の背を見送り深い溜め息をついて突っ伏した。
彼も本当の私を理解してはくれないのだろう。そう考えたら、また溜め息がもれそうになった。
ふと目をやった指先のネイルが、所々剥がれ落ちていた。
これ、塗ったのいつだっけ……
最初のコメントを投稿しよう!