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そろそろ日も暮れようかという時刻のかぶき町。
土方は沖田と市中見回りをしていた。
「あれ?あそこにいるの旦那じゃあねぇですかぃ?」
沖田が指差す方向を見ると確かに銀時だった。何人かの男達と談笑しているようだった。
やがて銀時が手を振りその男達と別れるがまた別の男達に声を掛けられ立ち止まり話込んでいる。
楽しそうな笑顔で話をしている銀時を見て土方が眉をひそめる。
「…こうして見ると…旦那はこの町の人気者みてぇですねぇ。まぁ仕事柄、顔も広いんでしょうけど…。」
「………」
土方は暫くそんな銀時を見ていたがやがてため息をつき煙草に火を点け吸いはじめた。
(…あんな楽しそうな顔…見たことねぇぞ……クソ…っ)
土方は段々苛立ってきたらしく腕組みをして舌打ちをした。
「あれ?土方さん…もしかして…妬いてんですかぃ?旦那があまりにも楽しそうなんで。」
沖田がニヤニヤしながら土方をからかう。
「…黙れ。」
ピシャリと一喝。沖田が肩をすくめる。
「…ったく…この程度で苛つくようじゃ…旦那とは付き合えませんぜ?もっと心を広くもたねぇと…って土方さんにゃ無理な話ですかねぃ。」
沖田の言葉に益々苛立つ土方。
「…黙れっつってんだろ…。叩っ斬るぞ…!」
そう言って刀に手を掛ける。
「やれやれ…土方さんはすぐ斬るで困りまさぁ。」
そんな沖田を無視し尚も銀時を見ていたが…男達の一人が銀時の肩を抱く。…端から見れば単に話をしている時の些細な行動だが土方にとっては…。
(…何気安くに触ってんだ…!つかてめぇも何呑気にそのまま話してんだよ…!)
土方は知らず知らずのうちに銀時の所へ駆け寄っていた。
ガッと銀時の腕を掴む。
「……!?」
銀時がハッとして何事かと振り向くと仏頂面の土方が立っていた。「…あれぇ?多串くんじゃねぇの…何?何か用?」
銀時が気だるそうに答えるが周りの男達は真選組のそれも副長のいきなりの乱入に驚いている。
「…悪ぃな…コイツ借りるぞ。」
ギンと鋭い目付きで睨み付けられその場にいた男達は皆コクコクと怯えながら頷く。
「ちょっ…なんだよ…まだ話してる途中でしょうがぁぁぁぁ!」
銀時が文句を言うが土方は構わず腕を引っ張り連れていく。
「…あ、悪ぃな。またな~。」
呑気に男達に手を振る銀時。
一部始終見ていた沖田が呆れたようにため息をつく。
「…しょうがねぇ人だな。…ったく嫉妬深ぇ彼氏持つと旦那も大変だねぇ…。」
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