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バタバタと逃げ惑う隊士らを刀を手に追う土方。だが沖田だけは涼しい顔だ。
「…ったく土方さんはすぐこれだ…ちっとは成長して下せぇ。ねぇ旦那?」
「………え?」
いきなり話を振られて困惑する銀時の傍に行き手を握る。
「………!?」
「あんなのと付き合ったら苦労しますぜ?どうですかぃ?俺に乗り換えるってぇのは…」
ニコッと銀時に笑いかける沖田。
「…はは…。」
苦笑いする銀時。それを見てますます土方が憤慨する。
「総悟!!てめ、何どさくさ紛れに手ぇ握ってんだ!!離しやがれぇぇぇ!!」
沖田に向かって斬り掛かるがヒョイとかわされる。
「まぁせいぜい旦那に捨てられないよぅ頑張ってくだせぇ。」
そう言って素早くその場を他の隊士らと共に走り去る沖田。
「よけーなお世話だこの野郎!」
ゼェゼェと息を切らせ刀を鞘に収めると煙草を取り出しライターで火を点ける。
「まぁ落ち着けトシ。あいつなりにお前を祝福してるんだよ。」
近藤が土方の肩に手を置いてそう言った。
「…どこがだぁぁぁ!!」
銀時がやれやれと肩をすくめた。
銀時を家まで送ってきた土方。
「悪かったな…バタバタしちまって。」
銀時が首を振る。
「しかし…何かあっさり承諾されたよな…普通なら[お前みたいなちゃらんぽらんでだらしない男が相手なんて、お父さん認めませんよ!]…てのが普通じゃね?」
土方が苦笑する。
「…だから言っただろ?近藤さんなら祝福してくれるってよ。」
土方が銀時の髪に触れる。
「じゃあ俺は戻る。…戸締まりちゃんとしろよ?」
銀時の頬に軽く口付ける。
「……!わ、わかってるよ!…ほらさっさと行きやがれ!!」
銀時が真っ赤になって後ろを向くとその背中を土方が抱き締める。「…銀時…。」
優しく名前を呼ぶ。銀時は黙ってその声を聞いていた。やがてスッと腕が解かれる。
「……またな。」
銀時が頷く。手を振って去って行く土方を銀時は見えなくなるまで見送った。
(おわり)
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