味覚の共有

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「……甘ぇ…。」 「ばっ…お前何やってんの!?」 銀時が慌てて水を土方に渡す。それを受けとり一口飲む。 「…ったく何考えてんだ。食えねぇくせに無理すんな。」 呆れ口調で銀時が言う。 「…お前が好きな物なら俺も食ってみようかと思ってな。だが駄目だな。俺には食えん。」 土方が口元を拭いながら言う。銀時がキョトンとする。 「はぁ?何だよそれ。」 「だからお前と同じ味を共有したかったんだよ。」 銀時が顔をしかめる。 「本当…バカな奴。」 銀時が呆れたように苦笑した。 「言っとくが俺はお前と同じもん食いたいとは思わないからな。あんな犬の餌的な代物。」 「犬の餌言うなっっ!」 その時土方の携帯が鳴った。 「…はい。……ああ、分かった。すぐ行く。」 そう言って土方は電話を切りながら立ち上がる。 「悪いな。戻るから。ここは払っとく。」 伝票を手に立ち去ろうとする土方に銀時が声を掛ける。 「いいけどよ…。俺ここに来た意味あんの?」 銀時がここに到着してからまだ20分しか経ってなかった。 土方は銀時に向き直る。 「あるさ。1日1回お前の顔見ねえと仕事が手につかん。」 銀時がカアッと赤くなる。土方が優しく微笑み、銀時の頬に手を当てる。 「…本当ならキスしてぇけどここじゃ無理だな。」 銀時が益々顔を赤らめた。 「ばっ…当たり前だっつーの!」 銀時が土方の手を払い退けた。その手を土方が掴む。銀時がはっとする。土方は銀時の目を見つめながら言う。 「だから…これで我慢する。」 銀時の手の甲にそっと口付けた。銀時が真っ赤になってその手を引っ込める。 赤くなって下を向いた銀時の耳元で土方が囁く。 「…銀時。じゃあ行ってくる。」 銀時は尚も下を向いたままであっちいけと言うように手をひらひらとさせる。 土方はそんな銀時を暫く見た後満足げに出ていった。 一人残された銀時は暫くボーッとしていた。そして土方が口付けた手の甲を眺める。そして一言。 「…本当、キザな野郎だ。」 そう小さく呟いた後、土方が口付けた手の甲に自分も口付けた。          (おわり)
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