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暫くの間二人して周りの桜を眺めていた。チラッと土方の方を見ると相変わらず煙草を吹かしながら黙り込んでいる。そんな様子を見た銀時は正面に向き直ってから言った。
「…土方くんよぉ。これって時間の無駄なんじゃあねぇの?」
その言葉に同じく正面を向いたまま土方が答える。
「仕方ねぇだろ…誰かさんが遅刻したせいで時間が中途半端すぎてどこにも行けねぇんだよ。」
別に嫌味で言った訳ではなかったが銀時にはそう聞こえたようだった。ガタッとベンチから立ち上がる。
「はあぁぁ!?何、お前まだ根に持ってんの?」
はぁと深くため息を付く土方。
「誰もんなこと言ってねぇだろ。」その言葉に銀時は憤慨する。
「言ってんじゃあねぇか!大体仕事になったんなら俺よりそっち優先するだろ普通。なあにゴリラに許可得たからってノコノコ来てんのお前っっ!?」
「仕事前に…お前の顔が見たかったんだよ。」
間髪入れずに土方はそう言った。銀時は一瞬何を言われたか分からなかったが直ぐその台詞の意味を理解し、かぁっと赤くなった。
しかし、土方はというと言った台詞とは裏腹に涼しい顔だ。
「…な、何言ってんのお前っ…。」そう言い掛けた時、強い風が吹いた。桜の花びらがヒラヒラと銀時の周りに舞い散る。
「おおっ、すげぇなこりゃあ。綺麗なもんだ。」
散った花びらを手で受けながら銀時が言った。その光景を土方は黙って見ていたが暫くして一言。
「ああ…綺麗だな。」
その言葉に銀時はニヤリと笑って土方に向き直った。
「そう思うだろ?…綺麗な桜だよなぁ。」
「いや、お前が。」
土方は銀時を見ながらそう言う。その台詞に銀時が硬直した。
開いた口が塞がらない、そんな感じで土方を見た後、首をぶんぶんと横に振り後退った。
「はいぃぃ!?なあに言ってんのお前ぇぇぇ?!さぶっ、もう春なのにさぶっ!冬だよ…俺の周りだけ真冬だよ、氷点下だよっっ!!北極だよっっっ!!!」
そう言った後、土方の方へ歩み寄りまじまじと顔を覗き込んだ。
「…お前、熱でもあるんじゃねぇの?どれ…。」
土方の額に手を当てようとしたがその手を捕まれる。土方はその手を口元へ持っていき、指先に軽く口付けた。その行動に銀時の顔が真っ赤になる。
「…お前って時々やることがキザだよな。」
照れ隠しにそう言って顔を逸らす銀時。
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